「あの大手企業に戻りたい…」
中堅SIerの薄暗いオフィスで、私は何度そう呟いたか分かりません。
かつて、大手メーカーで心を病み、一筋の光だったPythonスキルを武器にIT業界へ転職しました。しかし、そこで待ち受けていたのは、想像を絶する理想と現実のギャップでした。
この記事では、私が大手企業から中堅SIerへの転職で経験した地獄のような日々から、いかにして希望のキャリアを掴み取ったのか、そのリアルな体験談をお話しします。
もし、あなたが
- SIerからの転職を考えている
- 今の会社でスキルが身につかず悩んでいる
- キャリアチェンジに失敗して後悔している
のなら、この記事はきっとあなたの心を軽くし、次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。
第1章:希望から絶望へ。中堅SIerで待ち受けた厳しい現実
前職の大手メーカーでの苦しい経験を経て、私は「ITエンジニアとして成長したい」という一心で、ある中堅SIerに転職しました。面接では私のPythonスキルとAIへの熱意を評価してくれ、希望に満ちた再出発のはずでした。
しかし、入社してすぐに、その期待は打ち砕かれます。
とにかく給料が安い…大手との歴然たる差
まず直面したのは、想像を絶する給料の安さでした。もちろん、ある程度のダウンは覚悟していましたが、提示された金額は前職の大手企業時代を大きく下回るもの。生活水準を落とさざるを得ず、転職早々、経済的な不安が重くのしかかりました。
自社に技術力がない?エンジニアが育たない環境
さらに深刻だったのが、スキルが全く身につかない環境だったことです。
入社して分かったのは、この会社には自社で開発を行う技術力がほとんどなく、案件の大部分を外部の協力会社に丸投げしているという事実でした。
プロパー社員である私の役割は、コードを書くことではなく、外注先の管理やお客様との調整ばかり。これでは、私が望んでいたAIエンジニアとしてのスキルは身につくはずもありません。
「このままでは、ただ歳をとるだけの”なんちゃってエンジニア”になってしまう…」
日に日に焦りは募るばかりでした。
第2章:キャリアの迷子。望まぬ業務と心身を蝕む環境
スキルアップできない焦りを抱える中、私のキャリアはさらに迷走を始めます。
AI業務のはずが…なぜかRPA担当で客先常駐へ
入社時に期待していたAI関連の業務。しかし、入社から半年後、私に下された辞令は全く畑違いのRPA案件、しかも客先常駐でした。
常駐先は、自宅から片道1時間半もかかる場所。往復3時間を通勤に奪われ、平日のプライベートな時間はほぼありません。新しい技術を学ぶ気力も体力も、満員電車に揺られて削り取られていきました。
杜撰な開発環境と威圧的な上司
その後、なんとかAI関連のプロジェクトに戻ることができましたが、そこもまた別の地獄でした。驚くべきことに、そのプロジェクトではバージョン管理ツールの**gitすらまともに使われていなかった**のです。
技術レベルの低さに愕然とすると同時に、追い打ちをかけるように、部長からの威圧的な言動に悩まされる日々が始まりました。彼の高圧的な態度は、ただでさえ疲弊していた私の心をさらに追い詰めていきました。
「もう限界だ。ここから逃げ出したい」
私は、2回目の転職を決意しました。
第3章:再起をかけた挑戦。絶望の先に見えた一筋の光
「前の大手企業に戻りたい…」
後悔の念に苛まれながらも、私は前を向くしかありませんでした。しかし、2回目の転職活動は想像以上に過酷なものとなります。
「スキルがない」面接で突きつけられた厳しい現実
転職市場において、「SIer出身者」にはプロジェクト管理能力や顧客折衝能力が期待されます。しかし、外注管理ばかりで技術的な経験が乏しい私は、そのどちらも中途半端。
面接では「SIerにいたのに、どんな技術的貢献ができますか?」という厳しい質問に言葉を詰まらせ、お祈りメールを受け取る日々が続きました。
最後の望み…大手企業のLLM研究開発ポジション
何社も落ち続け、心が折れかけていた時、ある求人が目に留まります。それは、大手企業のLLM(大規模言語モデル)研究開発ポジションでした。
「これだ!これこそが私のやりたかったことだ!」
失いかけていた希望の光を見つけた私は、最後の挑戦にすべてを賭けることにしました。
面接では、これまでの経験を正直に話しました。
- メーカー時代に独学でPythonを学び、業務効率化を実現したこと
- SIerでAI業務への強い渇望があったものの、叶わなかったこと
- スキル不足の現状を認め、それでもLLMという最先端の分野で貢献したいという熱意
拙い経験でしたが、私のポテンシャルと熱意を評価してくれたのか、結果は「内定」。
電話口で内定の連絡を受けた時、私は思わずその場で崩れ落ちそうになりました。長かったトンネルを、ようやく抜け出すことができたのです。
まとめ:転職失敗は終わりじゃない。未来を切り拓くための糧になる
大手から中堅SIerへの転職は、私にとって紛れもない「失敗」でした。給料は下がり、望んだスキルは身につかず、心身ともに疲弊する毎日。
しかし、その失敗があったからこそ、自分が本当にやりたいことが明確になり、もう一度挑戦する覚悟ができました。
今、この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら過去の私と同じようにキャリアに悩み、苦しんでいるかもしれません。
しかし、その経験は決して無駄ではありません。なぜなら、その苦しみや後悔こそが、あなたの「本当にやりたいこと」を見つけ出すための、何よりの羅針盤になるからです。
もし立ち止まってしまったら、少しだけ勇気を出して、次の一歩を踏み出してみてください。その一歩が、あなたの未来を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
